大阪大学大学院人文学研究科 Graduate School of Humanities, Osaka University

研究科紹介

ごあいさつ

ごあいさつ

真の「Society 5.0」
実現に向けて

大阪大学大学院人文学研究科長 宮本陽一

 大阪大学大学院人文学研究科は、江戸時代の町人の学問所「懐徳堂」にルーツを持ち、1948年に法文学部に併設された大学院として発足した文学研究科と、1989年に言語文化部が解消・再編され、独立研究科として発足後、2007年の大阪外国語大学との統合を経て、拡充した言語文化研究科の統合によって、こんにちの社会が直面する数々の課題に取り組むべく、2022年4月に発足しました。

 Society 5.0ならびにAI戦略2021のもと、グローバル化した社会において科学技術は目覚ましい発展を遂げ、医療や科学技術等の分野において我々の生活を豊かにしていることは言うまでもありません。しかしながら、Society 5.0が目指す真の社会は「人間が中心となる社会」であり、「AI、ロボット中心の社会」ではないのです。コロナ禍でも本学は遠隔会議システムを用いて講義を再開しましたが、これが対面の講義とは異なるコミュニケーションの体系であることは実感するところです。また、ロボットがパターン認識に基づいて発する「音の連鎖」が、我々が発する「言葉」とは異なるという感覚は誰もが共有するのではないでしょうか。この2つの例は、人文学の視点で再度「人間」を見直すことが、更なる科学技術の発展には必須であることを端的に示しています。現代社会は、金水 敏 前文学研究科長が2017年の卒業・修了セレモニーの式辞で述べられた「岐路」に立たされているのです。いまこそ、文学研究科と言語文化研究科の理念と特質を継承しつつ、人文学の英知を結集し、人間が作り上げてきた言葉、芸術、哲学、歴史等、幅広く人文系の学問をより深く理解し、それらを融合させることが必要です。この領域横断的な研究によって得られた知見をもとに、文理の境界を超えた自由な発想を駆使して、国連が掲げている「持続可能な開発目標」等、さまざまな現代的課題に取り組むことによって初めて、Society 5.0が目指す「人間を中心とする社会」は現実のものとなるでしょう。

 人文学研究科では、この目的を達成するため、人文学専攻、言語文化学専攻、外国学専攻、日本学専攻、芸術学専攻の5専攻が、本学の他部局と連携しつつ、それぞれの研究・教育を遂行すると同時に、専攻の枠を越えた、異分野間の教員・学生の交流を活発化するために「人文学林」を設置し、このグローバル化した社会を見据えた、新たな学問分野創出に努めます。また、「デジタルアカデミア」を設置し、研究科構成員間のみならず学外に対して情報発信を積極的に行っていきます。このような新たな試みに加えて、デジタルヒューマニティーズに関する基礎科目を提供するなど、文理融合を容易にする教育プログラムのもと、「仮想空間」と「現実空間」の最善の融合形態を見極める目を持った、ウィズコロナ、アフターコロナ時代の社会において必要とされる、さまざまな分野の研究者、高度専門職業人を育てることを通して、人文学における新たなかたちの研究・教育機関を目指します。

2022年4月1日

大阪大学大学院人文学研究科長 宮本陽一

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